ブックタイトル語りびと
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語りびと
32焼却処分した。 夜は犬が死体に近づくのを防ぐため一人ずつ不寝番をやらされたが、くじで当たった深夜の番は気持ちがわるかった。 どんどん死者が増えるにつれ焼却では間に合わなくなり、三日目からは横穴式の防空壕のすべてに埋葬することとなった。 この役は別の班だったので、どのような状態で埋められたかはわからなかった。 死体を安置所へ運んでの帰りにある防空壕から女性と思える人の太股が見えたので土をかぶせておいたが、その前に八〇名と記された立て札があったので奥の方からぎっしりと積み重ねるように埋められたものと思われる。 残酷ではあるがその時はしかたがなかったのであろう。 四日三晩患者の収容と看護そして遺体運搬をし、九日の夕方次の救援隊と交代し、幸之浦に帰ったが、この四日間は正に地獄絵の中での生活そのものだった。 広島平和公園に次ぐ原爆被爆者の第二の聖地似島を十年後に訪れ、死者を葬ったと思われる所を探し歩いたが様子が変わり捜しあてることは出来なかった。 土葬にされて似島の土となられた多くの方々のご冥福を祈りつつ似島を後にした。おわり