ブックタイトル語りびと
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語りびと
33 お日さまが割れた 山やま 際ぎわ 節せつ 子こ被爆時の年齢‥十七才 被爆地 ‥(当時)佐伯郡八幡村の疎開先住居内最終勤務校‥ 市立吉島小学校 八月五日は日曜日であった。 官吏の父と学徒動員中の私は休日がまちまちで、日曜日を共に過ごすことは、めったになかったが、その日はほんとうに珍しく揃って家にいた。 父はそれをとても喜んで、母にご馳走をするようにと言い、母もお盆用にとしまってある餅米でおはぎを作ることに同意した。 私たちも手伝って、夕食はいつもにないにぎやかさだった。妹や弟たちもはしゃぎ、夕食後は縁側の籐椅子に集まって、父の吹く尺八に合わせて歌ったあの楽しさが最後のものとなることを誰も想像し得なかった。 八月六日、私は頭が痛くて起きられなかった。 父が検温してくれると三十八度九分である。 出勤するという私を無理に寝せて、父だけが何時ものように自転車で出かけていった。 毎朝私たち父子は朝日のまだ昇りきらない田圃道を並んでペダルを踏みながら、父と語り合って通っていたのである。 休んだことのない私は工場のことが気にかかり、